何故その分析をするのか

経営戦略を考える時、今では様々な「フレームワーク」が用意されていて、効率よく戦略を考えることができるようになっている。私の周囲でもそれを使ってコンサルタントの活動をしているものが何人かいる。その出来の良し悪しが結果につながるとあって、実際に顧客の側は真剣に取り組む。しかし、それでも上手に使いこなせる例と使いこなせていない例が出るのは何の違いだろうか。私の知り合いのコンサルタントに話しを聞いてみた。

そうすると、結果の出せていない多くの会社では、「フレームワーク」を「利用する」ことが目的になっていて、「なぜそのフレームワークを使うのか」という明確な目的や理由を持っていないという。コンサルタントでも、「課題を抽出するために、3C分析で現状の棚卸しをしましょう」と勧めてくるだけで、相談者がその3C分析を終えると、次に4P分析、そしてSWOT分析を行わせて、後はそれだけ分析を行ったのだから戦略を立てましょう」となどといって、役に立たない方針を出すことが少なくないようだ。

案外見えていない創業社長

言うまでもなく、フレームワークを使って分析を行うのは自社の商品やサービスを客観的に見つめ直すためだ。人間は自分のこととなると案外分かっていないもので、他人からの指摘で初めて気付かされるように、企業も同じだ。特に創業社長などは自社の商品、サービスに対する思い入れが深く、「こんなに良い商品だから売れて当たり前」と考え勝ちだ。そんな時、己を知るための最大の障害になっているのが、他ならぬ創業社長だったりするわけだ。

そんな時、他人の指摘を素直にどれだけ聞けるか。自信のない人ほど、フレームワークが役に立つ。予めことわっておくと、このフレームワークを作る作業はとても面倒くさいものだ。しかし、逆に言えば、それくらい手間をかけないとなかなか己自身、自分の企業のことは分析できない。案外簡単にできたという向きには、念のため落ちついて再度本当にそれでよいのか、見落としたところはないかなど見直すぐらいの余裕が欲しいが、そもそもこの大切なはずの作業が我流になっていることが問題の一つでもある。

3C分析は顧客分析から

まずフレームワークの代表的なもののひとつに「3C分析」というのがある。これは外部環境の分析から自社の戦略を分析するフレームワークで、「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から分析する。その時「Company(自社)」の分析から始めがちだが、それでは自社の良いところを再確認するだけに終わってしまう。ここは当然まず「Customer(顧客・市場)」の分析がありきで、次に「Competitor(競合)」の分析を行って事実関係を冷静に書き出さねばならない。そして一番最後が「Company(自社)」という順番になる。

また「4P分析」はそれぞれ「製品(Product)」「場所・販路(Place&Market)」「価格(Price)」「販促(Promotion)」の視点からの分析を指す。ここでは詳細の説明は省くが、先の3C分析やこの4P分析はそれぞれ独立しているのではなく、利用者によっては4P分析のそれぞれの視点に3C分析を組みわせて利用することが最も効果的なことが多い。つまり、「製品(Product)」について3P分析を行い、次に「場所・販路(Place&Market)」について3P分析を行うという風に続く。特に「製品(Product)」の分析は最も大切だ。面倒だろうが、やり切っていただく。

SWOT分析は最後に

これら「3P分析」「4P分析」の後に、「SWOT」分析を行う。これは「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つのカテゴリーで分析をする。すでに分析をしたことのある相談者が、「もうしてます」とうんざりされることもあるが、「3P分析」「4P分析」でバラバラになったパーツを整理整頓し、全体を俯瞰するために行う。この目的意識を持っているかいないかで、分析の精度は大きく異なる。

その際、特に「Strength(強み)」の分析に力を入れる傾向がみられるが、「Weakness(弱み)」にもしっかり目を向けることが必要になる。弱みを認識したうえで、その弱みを補うだけの強みを見つけることができれば、「どこにもない商品」に大きく近づくことができるはずだ。

分析の最中に、「もっと楽は方法はないか」と困惑される方も多いが、これはいわばその先にある販促活動などの羅針盤づくりのようなもの。これがなければ、文字通り右往左往するだけで、効果が一向に上がらなかったりする。これまですでにフレームワークに取り組んでこられた企業ももし効果が上がっていないようであれば、再考に値するのではないだろうか。