増える外国人労働者

飲食店やコンビニといった接客サービスの現場で、外国人の店員を目にする機会が増えている。久しぶりに東京に出張した折りに、昼食にハンバーガーショップに立ち寄ると、注文の受付窓口にずらりと外国人が待ち構えているのを見かけてビックリしたこともある。実際に日本に住む外国人の数は増え続けているそうだ。工場などの余り人目に触れない職場では、すでに外国人が圧倒的な戦力となっていて、もはや彼ら、彼女らなしでは業務が成り立たなくなっている地域もある。日本は外国人労働者を受け入れていないはずなのにどうしてこのようなことが起きているのか。

コンビニなどの店で働いているのは、基本的に留学生と見られる。本来、留学生は週に28時間しか働けないことになっているが、人手不足のあまり法令に違反してでもそれ以上に働いてもらっているのが現状のようだ。実際に、海外では日本に行けば留学用のビザで働けるという認識が広がっているようで、最初から働くことを目的に名ばかりの留学生として日本にやってくる例も多いという。現地のブローカーと呼ばれる人たちは、その当たりの事情に詳しく、盛んに日本の法令やその抜け道、現状を調べて、現地人を日本に送り込んでいるのだという。

受け入れ体制の整備を

また、技能実習の制度を利用して日本に来る人達も多い。この制度は本来、発展途上国の労働者が日本で働きながら技術を学び、母国に戻ってその技術を活かすという国際協力のためのものだ。技能実習法にも「日本の労働不足を補うための法律ではない」と明記されている。

そのため技能実習生は最長でも5年で帰国することになっている。しかし、この制度を利用して外国人を受け入れている企業も多く、劣悪な条件や長時間労働、賃金の未払いなど様々な問題が起こっているのが現状だ。

外国人を一過性の労働力として扱う姿勢が、ドイツ社会などで文化的な摩擦を生じ、禍根を残している事例は多い。日本でもこのまま明確な受け入れ政策を持たずに、なし崩し的な外国人の流入が続けば同様の問題が起きることは明らかだ。それでも日本で外国人受け入れへの議論が進まない原因として、受け入れに対する根強い不安がある。

しかし、そもそも受け入れ政策とは、国にとって必要な人を選択的に受け入れることでもある。日本で働きたい人が誰でも自由に入国し、定住できるということではなく、きちんとした受け入れ体制を整え、日本にとって望ましい人に来てもらうということなら、抵抗も少ないのではないだろうか。

共存の中でビジネスチャンスも

以前、秋田県男鹿半島のなまはげに外国人の留学生が参加して、伝統行事の復活に一役買っているというニュースを見たことがある。なまはげは男鹿市内の4割近い町ですでに実施されなくなっているそうだ。冬場に重い衣装をつけて家々を練り歩くのは体力の消耗が激しく、町の高齢者には無理があるうえに、迎える側にとっても食事の用意やわら装束の掃除といった負担が大きいからだという。日本の伝統行事に興味を持つ外国人は数多くいるはずだから、このような形で日本の社会に溶け込んでくれるのは大歓迎だ。

先日の新聞では、様々な外国のヘアースタイルを注文に合わせて対応できる町の美容室の話が出ていた。外国人は髪の質もそれぞれに独特で、それに合わせたスタイルがある。これまではなかなかそうした需要を満たす美容室がなく、外国人は不便を感じていたようだ。たかが髪の毛と思われるかもしれないが、外国人が増えるに従って、もっと彼ら、彼女らが住みやすい街にするために、私たちが提供できることやサービスも増えてくるに違いない。それは間違いなく私たちにとってもビジネスチャンスだ。

できることから始めよう

東南アジアでは人口増加が続いており、距離的・文化的に近い日本は今のところ魅力的な送り出し先に映っているに違いない。しかし、日本の経済は低成長が続き、移民を受け入れている他国と比べてすでに大きな優位性はない。さらに、日本語は習得が困難なうえ、英語などの言語と異なり、それが通じるのは日本国内に限られる。

今までは中国から来る技能実習生が多かったようだが、自国での所得が上がり、また生産年齢も減り始めたことから減少しているようだ。今後は反対に、中国が外国人の受け入れを始めることになるのかもしれない。親日国として知られるベトナムやフィリピンでも経済発展は著しい。正式に外国人の受け入れを始めたとしてもいつまでも日本に働き手として来るとは限らない。

どのようにすれば日本人、外国人双方にとって望ましい受け入れができるのか、今すぐにでも検討を始めなければ時間はない。上からの議論を待つだけでなく、自分たち一人ひとりができることから始めることもまだまだあるように思う。