広がる可能性

「約20年前のインターネットが普及してく過程とよく似ている」といわれるドローン業界の現状。その急成長する市場とこれからのドローンに対する期待をよく表している。実際にアメリカ当たりでは、ドローンは「ポストスマートフォン」としてベンチャーキャピタルや投資家の注目を集めているという。その意味するところは何か。

ドローンの本体は今や中国の深圳で創業したDJIが産業用に使われるドローン市場の7割以上の圧倒的なシェアを占めている。それだけを取れば、すでに勝負あったかとも思われるが、まだまだサムソンや中国のスマホメーカーのシャオミがドローン市場へ価格競争を仕掛けるなど、これからの動きにも目が離せない。

ドローンの市場規模についての予測は、まだ人によりまちまちなようだが、今後ドローンを活用したアプリケーションのサービス市場が大きく成長するという点では一致しているようだ。すでに映像空撮や、農薬散布などのサービスは始まっているが、これから測量・計測、インフラや設備の点検、遭難者の捜索、災害調査、警備・監視、貨物配送など、様々なアプリケーションの市場が立ち上がることが期待されている。

改正航空法で一定のルール化

そのドローンだが、昨年12月に「改正航空法」が施行されて、200g以上のドローンを「150m以上の高さの空域」「空港周辺の上空の空域」「人口集中地区の上空」以外で、国土交通大臣の許可なしに飛ばすためのルールとして、「日中の飛行に限定」「直接肉眼による常時監視」「イベントなど多数の人が集まる催しの上空での飛行禁止」などを定めている。

アメリカなど各国でも大体事情は同じで、ドローン対策に向けた規制の整備が急がれている。業界では、それまでルールがなかったのが、この規制ができたことで商業利用が活性化するのではないかと歓迎しているようだ。

実際に始まっているサービスを少し見てみると、「大規模な土木・建築現場の測量に、これまで1か月程度かかっていた空撮を3日で完了できた」とか、楽天は千葉県のゴルフ場でプレー中のゴルファーに飲み物などのサービスを届ける実験を行ったりしている。今はその第2弾を年内に始めることを検討中だという。

このようにドローンビジネスは単体の競争もさることながら、その使い方のアプリケーションサービスの競争に入っているのだ。そのアプリケーション次第で、専用のドローンや作業プログラム、操作者、データ処理などの市場が立ち上がってくることが見込まれている。

様々に広がるサービス

名古屋に本社があるベンチャー企業のプロドローンの名前を一躍高めたのは、2015年のネパール地震での被害調査で、ドローンを使って5500mという超高度な場所で6cmという精度の3次元測量を成功させたことだ。普通のドローンでは空気が薄いこの高度では飛べないといわれる。さらに同社では、8枚のプロペラを装着した物流専用機も開発中だという。

橋梁などのインフラの点検用に開発を行っているのは自動車部品メーカー大手のデンソーだ。同社ではプロペラの角度を変えられる機構を組み入れ、これによりGPSが届かず自動制御ができない橋の下でも安定したホバリングを可能にしているという。

山梨県のベンチャー、サイトテックでも、インフラ施設のカメラを使った点検に加えて、アームにハンマーをつけて打音検査もできるドローンの開発を急いでいる。
そして、その操縦者についても、現在のドローンを操縦している人たちはカメラマンであったり、ウェブ制作者、ラジコン業界にいる人などがそれぞれの仕事の延長で関わっていることが多い。しかし、これからスマホのようにドローンが私たちの生活に密着して生活に溶け込むようになるためには、何より安全が求められる、そのためにドローン独自の特性を十分理解した操縦者が出てくることが望まれている。

課題も山積み

この点、日本では現状ドローンの操縦者に義務付けられている免許というのはない。いくつかの民間の団体が独自に産業振興協議会(JUIDA)やDJI、または日本マルチコプター安全推進協会(JMSA)が認定したプログラムに沿って操縦の教育・トレーニングを実施し、終了後にはそれぞれの団体の認定資格が与えられているだけだ。

ドローンの普及には、衝突や墜落の危険性をどのように回避するかが必須だ。多くのドローンが飛び交うようになった際の飛行管制をどうするかなどの課題がまだまだいくつもあるのは事実だが、その分チャンスも多く眠っているということだろう。

今、中国のDJIには世界中から人材が集まってきているといわれる。100人以下で創業したころは深圳にある他の企業と大きな違いはなかったというが、今のDJIには「確立されたブランドイメージ」があるのが強みだ。そのDJIが目指すのは、「簡単で誰もが使えるドローン」だという。

10年前、20年前には今のスマホ、インターネットの姿を想像できた人がいなかったように、これから10年後、20年後の世界のドローンを明確に想像できている人はいない。しかし、その未来に向けて動いている現実が確かにあるのだ。