数字に表れない利益もある

創業した年は赤字でも仕方ないのかもしれないが、2、3年もして手持ちの資金の底が見えてきだすと、「今の仕事が利益につながっているのか」と気になってくる。利益は言うまでもなく収益から費用(コスト)を差し引いたものだ。つまり、今の仕事が収益を上げることにつながっているのか、あるいは費用を抑えることになるのかでなければ、利益にはつながらないということだ。

本当は数字ですべて表れれば分かりやすいのだが、本当は得られる利益を得そこなった(機会損失)、本当は発生しているはずの損失を回避できた(機会利益)ということもあり、これらも利益につながる行動ということになる。

コスト削減ということがどの会社でも掲げられているが、現在発生しているコストを100から90に減らすことだけがコスト削減なのではない。今当たり前に発生しているコストだが、実はまったくの無駄ではないかというコストも必ずあるものだ。そういうコストを見つけ出し、利益につなげることが大切になってくる。そのために業務の見直し、人の配置の見直しなど、常に行っていかねばならない。だから利益について考える時、製造や営業職だけでなく、管理部門のように売り上げがなく、コストだけが発生するところであっても関係するのだ。

隠れコストに注意

何らかの作業を待っていて手を休めている間もコストは発生している。手待ちを無くすコツはとてもシンプルだ。それは自分の抱えている業務が無駄に他人の手待ち時間を発生させていないかを意識するだけでいいのだ。そのために仕事を頼まれた時は、何を、いつまでに、どのくらいの精度で、ということをしっかり把握する必要がある。

時給980円のパートタイムであっても、例えば3人が集まって2時間会議をすると、980円×3人×2時間=5880円のコストがかかっている。ましてや、それが社員ならその何倍ものコストがかかってると覚悟をしなければならない。このため、会議の生産性を上げることは必須だ。ダラダラとただ長い時間を費やすだけの会議は無駄以外の何物でもない。そうならないため工夫はいくらでもあるはずだ。

案外なおざりにされがちなのは、営業にかかるコストだ。1件の受注を獲得するのに、例えば3回の訪問でできるのと、数か月もかかるのとでは利益に与える影響は各段に違ってくる。中にいつまでも「親離れ」ができない営業マンは、いつまでも上司の同行に頼り、確実に売り上げが見込める先であっても、自分だけでなく上司の時間まで奪っていることに平気な顔をしているのは論外だ。

人の採用もコストの温床

最近であれば、何が何でも人の採用に結果を求める傾向は強い。当然のことだが、せっかく採用してもすぐに辞めてしまったとかなると、これは会社にとって大きな損失だと強く認識する必要がある。だから採用までのコスト、採用した後の研修にかかるコスト(そのコストの中には研修に関わる社員の機会損失も含めなければならない)を意識して、それらコストの抑制だけでなく、その社員が長く働けるような環境づくりにも力を入れなければならない。万一、仕事ができる部長であっても、その下に配属した部下がどんどん辞めていくようなら、それはとんでもない赤字を生み出す上司ということになる。

また、働き方改革で残業の削減が叫ばれているが、サービス残業が企業文化になっている会社もある。そのようなサービス残業であっても、残業代の不払いが露見すると、過去にさかのぼって支払い義務が生じる。

本来、残業は通常に8時間労働した後の疲れた状態でするものだから、決して効率が良いものではないはずだ。にも関わらず、残業代は通常25%割増で計算される。つまり、残業してでもやる仕事は、就業時間内にやる仕事の1.25倍の成果がなければ、会社にとっては損失になるということに他ならない。どうしても時間足りないのであれば、早出で対応する方が合理性があるように感じられる。

コストと同時に黒字倒産にも注意

コスト削減を考える際に重要なポイントは「まず売り上げに直接関係しない費用から先に考えること」と香川晋平公認会計士は自身の著書の中で唱える。売上原価や販売費は売り上げに影響するコストなので、これらを削減すると売り上げも一緒に減少してしまうリスクが生じる。

このため「せっかくコストを削減したにも関わらず、それ以上に売り上げが減少し、その結果利益が減ってしまった」ということはよくあることと注意を喚起している。
香川氏はコスト削減とは直接関係しないが、年によっては「黒字倒産」が倒産件数の統計の中の約半分を占めることにも危惧を抱いている。

販売するための在庫は、先にその仕入れ代金を支払うことになるので早く販売してお金に変えないと資金繰りは当然厳しくなる。だから「コスト削減と同時に、仕入れや経費の支払い方法についても常に改善の余地がないかを考えておかねばならない」と唱える。

たとえ商品やサービスが売れて利益が出ているように見えても、その代金を回収する前に持っているお金以上の支払いをしなければならなくなれば、そこで会社はつぶれてしなうのだ。にも関わらず、「延滞債権はどの会社でも見かけられる。しかもそれに危機意識をもっていない社員まで存在する」ことに危うさを感じている。