過去の成果例は参考にならない?

チームの生産性を高めるために何が必要か。強いリーダーシップが必要という人もいれば、フラットな組織が効果的という人もいる。仕事とプライベートは分けた方がいいという人がいれば、家族ぐるみの付き合いが生産性を高めるのにつながるという人もいる。何が本当なのかというのは、実は社会的な実験による比較が難しく今も分かっていない。

だから、こうした例があるという紹介に留まっているのが現状だ。社によって、または同じ社でも時代(タイミング)によって事情が異なるのに、過去に成果があった例をそのまま真似をしようとしてもうまくはいかない。時々、成果例の報告会が開かれたりしているが、それを参考にして導入を図っても上手くいかないことも多いのだ。

メンバーや組織の規範は関係ない

アメリカの大企業が少し以前に、社内でどんなチームが生産性を上げるのか調査をしたことがあるそうだ。それによると、メンバーの性格や行動、バックグランドによる有意の差は認められなかった。つまり、同じような興味を持った人を集めたり、男女比を変えたりしても生産性には影響がなかった。

また、組織の規範にも注目をしたが、それも目立った特徴はなかった。議論よりコンセンサスを重視するパターンや、他人の話しを途中で遮ってまで意見を言うのと、他人の話は最後まで聞くことを課したチームとを比べても、明確な生産性の差は見つけられなかったようだ。

大切なのは「心理的安全」

では結局何も分からなかったのかと言えば、そうでもない。ただ一つ、「優れたチームは心理的に安全な状態が保障されている」ということだった。これはチームのメンバー全員が、その中において全面的に受け入れられているということを指し、恥をかかされたり、拒絶されることがない状態を指す。

心理的に安全な状態にあると、チームのメンバーは自分の声の調子や言い回しが相手にどんな印象を与えるかにとても敏感になってくる。しかしそれが分かっても、それをどう仕組みとして社内に組み込んでいくかを考えるのは難しく、まだ一般的な処方箋としては分かっていない。

それぞれの工夫が必要

そのアメリカの企業では生産性に問題を抱えていたチームのリーダーが、あるミーティングの始まりに、実は自分が末期の癌に侵されていることを告白したところ、求めてもいないのにメンバーが次々に自分の健康状態やプライベートな話をはじめていったそうだ。そして、互いに自分の困難を打ち明けたことで、チームの結束が強固になり、生産性の向上につながったという。

職場だからといって、仕事の話だけをして済ますことは難しいだろう。本来の自分をさらけ出し、周囲に人たちに共感を持ってもらうことが「心理的な安全」につながることは以前からもいわれている通りだ。そんな雰囲気をどう作るのか、それぞれの工夫に待つしかない。