究極の選択でも選ぶ楽しさ

小学生の時、流行った遊びで、「AかB、どちらがいい?」と聞くのがあった。
例えば、放課後の掃除をとるか、運動場を駆け足で10周をとるか。普通なら本当はどちらも検討の対象外のものであっても、AかBかと迫られることで、どちらかを選ぶのだ。そして、その選択を巡ってなぜそう判断したのかを互いにはやし立てるのだ。


顧客が商品を買おうとする時も、そこに選択肢を設けると面白くなる。選択肢がないと、「買おうか、それともやめておこうか」と悩む。ここで、選択肢が2つあると、「どちらを買おうか」と悩むことになる。人は比較できるものがあることで判断しやすくなり、購入へと進みやすくなるのだ。

選択肢を3つにしたら売れた

有名な話に、イトーヨーカ堂での羽毛布団のセールの時の話がある。当初、3万円と7万円の2種類をそろえたが、なかなか売れない。そこで、中間の価格帯として5万円の商品を追加したところ、羽毛布団が急に売れ始めたそうだ。
そういえば、郊外の紳士服チェーン店でも価格帯を3つ用意している。

紳士服はブランドや販売元によって値段の感覚は大いに変わるが、大体10000~20000円前後のもの、25000~35000円前後のもの、そして40000~70000円前後のものと分かれる。
スーツを毎日着用するビジネスマンであれば、一般的に中ほどのものがお勧めとされており、実際に売れ筋はここに集中しているようだ。

顧客の判断を容易にしてあげる

しかし、だからといって、店では価格帯を1つに絞り込むことはしない。価格帯が1つしかなければ、顧客はライバル店の商品と比較しようとするからだ。ライバル店と比較して、どちらで購入するかを決めるのだ。でも価格帯が2つになれば、顧客に自店の商品の中から選んでもらうように誘導できる。

さらに、先の例で見たように、その選択肢が3つになれば、より売り上げにつながりやすくなる。選択肢が2つだと、どちらを買おうかと悩んで終わってしまうことになりかねない。羽毛布団のように3万円と7万円では価格が離れすぎていて、買う側として判断が難しかったということだ。

選択肢を工夫して試す

もう一つ、人間が集団を構成すると、上位が2割、普通が6割、下位が2割になるという「2対6対2の法則」というのがある。これは上記のような選択に当たってもいえることのようで、3つの選択肢があった場合、普通(中位)を選ぶ人が多くなるという。このような購買心理も把握した上で、商品構成を考えてみると面白いことができる。

普通(中位)の商品を選ぶ人が多いなら、そこにお得感が出るように品質レベルで上位の商品との差を少なくするとか、利益率を高くする工夫をしてみるとか、上位の価格を高めにして安く感じてもらえるようにするとか…。工夫の余地はいろいろある。試してみる価値はあるように思うがいかがだろうか。