濃密な関わり合いをもう一度

「廊下にゴミが落ちたままになっている」「トイレットペーパーの端は前の人の使った後がそのままになっている」…これは何も今さら学校の話を蒸し返しているわけではない。
会社でよく見かける光景を話している。ゴミが落ちたままになっているのは、それを見て社員が何も思わないという「風土」があるからだ。

成果主義やキャリア自律の促進で、自分の仕事が順調に進めば、周囲との協調などは重視しなくて良いという風潮が広まっているように感じるのは私だけだろうか。

他者への関心が薄れ、何でも損得勘定で考えるようになってきていることを本気で危惧している。「大阪のおばちゃん」のような、お節介さが懐かしく感じられるのだ。

濃密なコミュニティが強い職場を作る

様々な職場に出入りしていると、コミュニティとして機能していると感じられる職場と、そうでない職場があることが分かる。

コミュニティとして機能している職場は、利他的な支援活動や勤勉行動も、自律的な創意工夫活動も、どちらも活発に行われており、それが原動力となって強い組織を形づくっている。


それは「その職場のメンバー間に強い関わり合いがあるためだ」と説明しているのは、鈴木竜太・神戸大学大学院教授だ。
ここで言う関わり合いとは、人間的な関わり合いではなく、仕事の設計上の関わり合いで、「それは大きく、仕事の相互依存性と目標の相互依存性の2つに分けることができる」と話す。

仕事は1人で完結しない

仕事の相互依存性とは、自分の仕事が他のメンバーの仕事と依存し合い、影響し合っていると感じる程度のことを指している。

そう感じるためには、「仕事のプロセスやスキルのインプットなどを、お互いが関わり合わなければ遂行できないように設計するとともに、仕事というものは仲間ともにやって初めてできるものというような価値感を伝えることも大切」としている。

「本来、共通の目標や目的なしに人は関わり合えない。多様性を維持しながらコミットメントの高い組織を作るには、目標の相互依存性を高めることが欠かせない」。目標の相互依存性とは、目標の共有のことだ。

下からのマネジメントの大切さ

関わり合う職場の大きな特徴の1つは、「下からのマネジメントが起こること」だ。つまり、「職場の中で皆が自発的に助け合い、臨機応変に互いのポジションを調整し、ルールを守って自律的に創意工夫をするようになる」とその効用を説く。

また、「その過程で社員たちは自分を組織の歯車の1つではなく、組織にとってかけがえのない存在だと認識するようになる。そして同時に他者への関心も強めていく」のだ。

この通りだと、下からのマネジメントは「上からのマネジメント」とは違う形で、同様の効果を発揮させることができるということだ。
このほかにも、「個人の自律的行動も活性化できるメリットも見込まれる」という。挑戦してみると面白いだろう。