起業の一手段にもなっているM&A

従来はM&Aと聞くと、大手企業の一部で話題になるものといった認識がまかり通っていたものだが、近年では中小企業はもちろん、中には起業の一手段としても利用される例さえある。そうした背景にあるのが中小・中堅企業における後継者問題だろう。経営者の親族や自社内に適当な後継者が見つからない場合、事業承継の一手段としての認知度が高まってきており、実際にそうしてM&Aを活用して成長している企業の例が増えている。また、そうした動きと相まってM&Aを仲介したり相談に乗ったりするアドバイザーも増えており、意欲ある起業家がそうしたサービスを利用している。

こうしたM&Aは「スモールM&A」とも呼ばれる。通常M&Aでの売買金額は数千万円から大きなものになると数兆円といった数字がニュース等で賑わっているが、これら小規模な会社や個人の店舗などを対象にしたスモールM&Aでは数百万円から数億円クラスのものが多いようだ。これまでと異なり多額の買収コストがかからず、後でも述べるが「事業譲渡」や「会社分割」といった簡単な買収手法とも相まって、売り手と買い手の相性が良ければ、短期間で成約に至るといわれる。そのため、今後ますますこのスモールM&Aは増え、わが国のM&Aの主流になるものと見られている。

M&Aのさまざまな手法

まず一般的なM&Aの手法としては以下のようなものがある。

①TOB(Take Over Bid)
これは株式公開買い付けのこと。ある企業を買収したい時、株価と期間を表明して不特定多数の株主から証券取引所を通さずに直接株式を買い付ける。これにより短期間で大量の株式を取得することができる。TOBには「友好的」とか「敵対的」という言葉が付くこともよくある。

②MBO(Management Buy Out)
現在の経営陣が自社や事業を買収すること。経営陣が自社の経営権を持つオーナー経営者になる。MBOを使って上場を廃止し、思い切った事業再編を行うような状況がよく見られる。

③MBI(Management Buy In)
MBOの派生で、企業の外部の経営陣による買収を指す。

④LBO(Leveraged Buy Out)
企業買収では大量の買収資金が必要になるが、このLBOを使うとこうした資金をすべて用意しなくても買収することが可能になる。LBOでは買収される企業の資産や将来性を担保に、資金を金融機関から借りてその資金で買収する。

事業譲渡、会社分割で一部を買い取ることも

上記のM&Aの手法以外にもよく使われているのが事業譲渡だ。

事業譲渡は会社の全部または一部を他の会社に譲渡すること。事業譲渡は営業譲渡と呼ばれることもある。事業を対象にした売買契約であるため、基本的には当事者同士で売買する事業範囲や対価を自由に決定できる。買い手企業は売り手企業と結んだ事業譲渡契約に記載した資産・負債のみを引き継ぐため、簿外債務や偶発債務といった「隠れ債務」を引き継いでしまうリスクは低くなる。

それとよく似た方法に、会社分割がある。これも事業を他社に譲り渡す方法で結果は同じなのだが、対価や手続きなどに違いがある。まず対価は事業譲渡では金銭を含めて自由に決めることができるが、会社分割の場合は原則として株式になる。但し、最近では対価の柔軟化が図られており、金銭等も可能な場合がある。

少し細かくなるが、注意をしておきたいのは、債権者保護手続きについてだ。会社分割は債権者保護手続きが必要になる。一方で、事業譲渡では不要だが、債権者ごとに個別に同意を取り付ける必要がある。よって一概には言えないようだが、会社分割の方が手続きの手間はかからないとされている。

また、事業譲渡では譲り受けた事業に従事していた労働者を雇い入れる場合、労働者個人と個別交渉が必要。一方で、会社分割では労働契約承継法の定めるところに従って、労働契約を承継させる。

メリット、デメリットをよく勘案して

「スモールM&A」のメリットとしては、売り手側とのマッチングがうまくいけば、少ない時間と予算で、すでに長年に渡って築き上げられてきた技術やノウハウはもちろん、顧客や一定の信用までもそのまま手に入れることができるところにある。このため失敗するリスクもゼロから始めるより低いといえる。

一方でデメリットとしては、売却案件を探すのが簡単ではないということがある。自分がしたいジャンルの案件となるとさらに難易度が上がる。とはいえ、中小企業基盤整備機構が全国各都道府県に設置している事業引継ぎ支援センターでもマッチングを行っているので、興味のある方は一度そのサイトをご覧になればいいだろう(https://shoukei.smrj.go.jp)。

最後に蛇足だが、いくら「スモールM&A」が増えているとはいっても、安易な気持ちで企業や店舗を買うようなことをすべきでない。それら買収した企業や店舗には当然のごとく従業員がいて、買収に当たって反感だけでなく不信感を持たれると、最悪退職といったこともありうる。こうなるとせっかく買った事業もうまく軌道に乗せることができなくなり、何のために買収したのか途方に暮れることになりかねない。できれば買収前に企業の経営者や従業員とよく話し合って、「これなら間違いない」くらいの認識を買収する側、される側のお互いで持ちたいものだ。

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