徹底的なヒヤリングから始まる

私の友人で個人事業主となってWebデザイナーをしている者がいるが、Webデザイナーではない私にとってもなかなかその商売の仕方は参考になる。彼はWeb制作の依頼があって顧客に出向いた時も、なかなか「そうですか。じゃ、お望みのWebの制作にとりかかりましょう」とはならない。「なぜ顧客がWeb制作を頼もうと思ったのか」「どんな悩みを抱えているのか」「Webの制作を依頼することで、どんな問題を解決したかったのか」を徹底的にヒヤリングするのだという。

Web制作を顧客が求める背景に、ひょっとしたら顧客がまだ気づいていない本当の悩みが隠されているかもしれない。そうした場合、仮に望み通りのWebができ上がっても顧客の悩みは解決されず、モヤモヤした気分だけが残るといったことを恐れるのだ。それに、Web制作だけなら数十万円の商売にしかならならなくても、顧客の悩みを解決するコンサルタントとして顧客に別途請求することができれば、同じ一つの引き合いからうまくいけば何百万円もの商売につなげることができるかもしれない。そのために、まず始めに顧客の抱える悩みの徹底的なヒヤリングは欠かせない。このことは、決してWeb制作に限った話ではないだろう。

Web制作をプロジェクトチームの結成にまで引き戻す

その悩みとして往々にしてあるのが、「幹部(候補)社員の意識・能力が今一つ」「社員の意識・能力のレベルアップを図りたい」「モチベーションが低下している」「チャレンジ意識が欠如している」といった具合だそうだ。それを聞き出した彼は、「これらの問題を、Web制作を通じて解決していきましょう」という提案に変えるのだそうだ。そのため、具体的にまず始めるのが、社内で新しくWebを制作するためのプロジェクトチームの結成だったりする。くどくなるが、ただ単にWebを制作するだけなら、こんなチームの結成などは必要ない。社長や担当者の意向を聞いて、Webサイトの企画に落とし込み、制作・完成させれば良いだけだ。

それをわざわざ、社内にプロジェクトチームを立ち上げて、社員を巻き込んでいくのだ。とても面倒ではあるが、ここが単なるWeb制作業者で終わるか、顧客の悩みを解決するコンサルタントになるかの違いだ。そして、プロジェクトチームが結成されれば、そこでWebの骨子となる企業コンセプトの作成にとりかかる。これがなければ、実際にWebサイトを作る時にページによってイメージがバラバラになったりするから、非常に大切になるものだ。

企業コンセプト作りがカギを握る

余談になるが、よく「わざわざ企業コンセプトを作らなくても、我が社には経営理念があります」とか「社是ではいけないのですか」といった質問が寄せられるが、もちろんそれらも参考になるかもしれないが、これからWebを制作する実際の作業に当たって、その経営理念なり社是を見てプロジェクトチーム全員が一つにまとまれるものでなければならない。「何だか良いことを言っているようではあるが、今一つ腑に落ちない」というようではダメなので、キャッチフレーズになるような企業コンセプトを作ろうというのだ。

その企業コンセプトの作り方はいろいろな方法があって、書店などに行くとそれらしきノウハウ本がいくつも出ている。だからここであえて詳しくは触れないが、大切なのは、その会社の理想とする顧客の潜在的な要求を解決するのに、その会社は何を顧客に提供できるのか、どんな約束をすることができるのかを共有することだ。そこから企業コンセプトを作っていくのだが、その過程で、例えば顧客の悩みの一つでもあった従業員のモチベーションのアップなどに対する効果などもうまく引き出さなければならない。

Web完成後も提案のチャンス

この作成過程が顧客の悩みを解決するために大切なため、事前にそのやり方や成果に対する社長や担当者へのプレゼンの仕方などを周到に練り上げておく必要がある。間違っても、「企業コンセプトはこんな風に決まりました」と社長に提案した時に、「そんなことは聞いてなかった」とか「どうもうちの社には当てはまらないのではないか」などと思われてはいけない。そのために、小まめに社長や担当者へ報告することを欠かすことはできない。こうした手間も、コンサルタントとして報酬を得るためには必要なことだ。

その後はWebサイトの実際の作成に入り、完成させるのだが、ここでも「こんなWebサイトができました」で終わってはいけない。せっかく、企業コンセプトまで作ったのだから、「ついでに名刺もそれに合わせましょう」「会社案内はどうしましょうか」「チラシも統一した方が良くはないですか」といった提案ができるはずだ。その提案が受け入れられるかどうかは、それまでの過程でどれだけ顧客の懐に入ることができているかどうかにかかってくる。

たまたまWebサイトの制作についての例を上げたが、ほかの商材でも同じことだ。視野を広く持ち、顧客の懐深く入って、自身の経験値を高めていきましょう。