お金がなくなったら倒産

以前、創業前の方たちが集まる勉強会の雑談の時に、「会社がつぶれるのはどんな時か」という話になった時、最も多い答えが「赤字になった時」だった。創業を控えた方たちでさえそうなのだから、一般の方たちの認識でも同じなのだろう。しかし残念ながら、この答えは正しくない。正解は「お金(現金)がなくなった時」である。つまり、仕入先や従業員への支払いができなくなった時に会社は倒産する。逆に言えば、「黒字倒産」という言葉があるように、たとえ会社が黒字であっても倒産するし、逆に赤字が続いていても、お金さえ残っていればつぶれることはない。

だから起業をする際には、できるだけお金に余裕のある状態でスタートした方が良い。私の起業時もそうだった。半年から1年近く売り上げの上がらない日が続いたが、それでも何とか今日があるのは、その時にまだお金がわずかばかりだが残っていたからだ。もちろん起業の際は、はじめから売り上げが立つはずだった。だがなかなか思い通りに事が運ばず、どんどん手持ちのお金がなくなっていく恐怖におびえながら、何とか踏みとどまることができたのだった。ではどれくらいの資金を準備しておけば良いのか。

4つに分けた資金計画を

ある経営コンサルタントは、起業に臨む際には「資金は設備資金、運転資金、赤字補てん資金、生活資金の4つに分けて、計画を立てるべきだ」と話す。

まず「設備資金」は製造業であれば機械、飲食業であれば厨房機器や内装、運送業であればトラックなどの購入代金がそれだ。事業を始めるに当って必要になるものだが、一度支払って手に入れれば、長期に渡って売り上げに貢献してくれる。会計的には購入した年に一度で費用計上せず、使用期間に応じて少しずつ費用化し、どれだけの期間売り上げに貢献するかがポイントになる。

「運転資金」とは製造業での材料仕入れや、小売店での商品の在庫、飲食店での食器などの消耗品類のほか、集客に必要なホームページ、チラシなどの販促ツールにかかる費用など。起業時にそろえておく必要があるが、その後、売り上げによって短期間で回収が見込まれるようなものだ。これらは通常1年以内に使いきってしまうので、その期の費用として計上する。

「赤字補てん資金」は創業当初に発生しやすい赤字のリスクに備えるためのものだ。一般には事業が軌道に乗るまで半年くらいはかかるものとして現実的に見積もって、その間の赤字の穴埋め資金を当初から見込んでおくことが大切だ。

赤字も見込んでおくこと

実際の起業においては、この赤字補てん資金を見込んでいない方が案外多いような気がする。予め事業計画書などを作って準備万端整えれば整えるほど、自分の頭の中ではすぐに売り上げが上がると考えているのかもしれないが、そうそう計算通りに物事が進むのなら誰も苦労はしない。事業が軌道に乗るまでに資金が尽きて、起業が短命に終わってしまうほど残念なことはない。ぜひ、必要な資金の一つとして頭に入れておいて欲しいものだ。

最後の「生活資金」とは起業家であるあなた自身の生活費のことだ。サラリーマンならたとえ会社の業績が不振でも、会社に行って仕事さえしていれば、毎月決められた額の給料が自動的に振り込まれる。自分が提供した労働時間に対する対価が給料になっているからだ。ところが起業家は違う。いくら長時間働いても、利益が出なければ給料は出ない。起業家は自分が生み出した利益に対する対価が給料になるからだ。とはいえ、起業家にも家族はいるだろうし、生活していくためにも最低限の資金は必要だ。そこで、あなたが生活資金として確保すべき分も資金計画に入れておき、それを役員報酬として計上する必要があるのだ。

多様な資金調達方法

日本政策金融公庫総合研究所が毎年実施している「新規開業実態調査」によると、「起業経験はないが、起業に関心がある」という起業家予備軍は15.7%(6人に1人)いる。しかし、起業に踏み切れない大きな原因として、「自己資金不足」と「失敗時のリスクの大きさ」にあるとされる結果が出ている。しかし、資金が足りないのであれば、調達すれば良いだけの話である。例えば、考えられるものを列挙するだけでも、以下のようなものがあるだろう。
・自分の貯金や資産を出資したり、会社に貸す。
・配偶者や両親、その他の親族からは、出資してもらったり、借りる。
・友人、取引先、以前の勤め先などからは、出資してもらったり、借りる。
・政府系金融機関、民間金融機関から借りる。
・個人投資家から出資してもらう。
・ベンチャーキャピタルから出資してもらう。
・国や地方公共団体から助成金をもらったり、補助金をもらう。
・自分の事業から稼ぐ。又は前金をもらって支払いは後払いにする。

なかなか自己資金や周囲に頭を下げて借りることばかりしか思い浮かばない方も多いようだが、こうして列挙してみると案外いろいろな方法があることに驚くことになる。もちろん、資金調達先がおいそれと貸してくれるわけではないし、それぞれの資金調達先がお金を貸す目的もそれぞれに異なっている。ただ、いろいろな可能性があることを知っておくことは大切だろう。