待ったなしの人手不足対策

中小企業を回っていると人手不足が話題に上らないことがないほど、深刻度が増している感じがする。大阪府中小企業家同友会が今年夏場に行った調査では、「必要な人材が確保できていない」と回答した企業は64%にのぼった。業種別では建設業の71.7%が人手不足と回答しており、以下、製造業が69.9%、運輸業が64.7%、サービス業が64.5%と続いている。

東京・大田区と並ぶ町工場の町である大阪府東大阪市でも、「地元の工業高校を始め各学校に求人を出しても、今年は採用ができなかった」と打ち明ける企業は多い。何しろ高校生1人当たりに約10社からの求人が寄せられていると言われ、同じ中小企業であっても知名度のある大手の系列会社に学生が流れているのが実情だ。

だから外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法などの改正に期待する向きも多い。単純労働を含む分野で外国人に門戸を広げるこの改正は、まだ制度の全体像に不明な部分も少なくない。このため、拙速な導入に対する疑問の声も多く上がっているが、実情を考えると避けて通れない改革であることは間違いない。

外国人と一緒に働く

従来の技能実習制度は技能移転を通じた開発途上国への国際協力を目的としており、日本で就労できるのは最長5年間の制約がある。もともと人材育成が目的であり、労働力の需給調整の手段ではないと定められている。しかし、昨年時点で日本で働く外国人約128万人のうち、実習生は約20%を占め、すでに事実上の中小企業の戦力にもなっていた。

今回の改正では、新たな在留資格となる「特定技能」の創設を柱にする。「特定技能1号」は日常会話程度の日本語能力と業務に対する一定の知識や経験を条件に、最長5年間の在留を認める。特に人手不足が深刻な業種では、単純労働にも門戸を開く。その対象には農漁業や外食、介護、建設など14業種が検討されている。

また、「特定技能2号」は熟練した技能を持つ人を対象とし、家族が帯同できるなどの条件を満たせば、永住の道も開ける仕組みだ。見込み通りとすれば、来年4月1日から導入が図られ、2019年度から5年目までの累計で、14業種で最大34万人強を受け入れることになる。

受け入れ体制は整っているのか

しかし、人手不足の中小企業にその受け入れ態勢は整っているのか。京阪神地域で活躍するある社会保険労務士は危惧をする。外国人との文化・風習の違いや宗教を理解することはもちろんだが、「何はともあれ、日本人従業員と差別しないこと」-こんな単純なことさえ理解されずに、トラブルを引き起こしている例が今も絶えないと嘆いている。

「差別しない」といっても簡単ではない。単に日本人従業員と差別しないだけなく、一方でその日本人従業員とのバランスも考えなければならない。外国人従業員が働きやすい職場環境をつくることが重要だといっても、外国人に過度に配慮しすぎたりすると、逆に日本人の不満の原因になったりするからだ。

また、日本人従業員の多くが、「人事部が勝手に外国人を採用している」と考えるようになると、問題のタネを抱え込むことになる。その社会保険労務士は、基本的な姿勢として「日本人にはない発想や感性、バイタリティーに期待して外国人人材を採用したこと」「会社や職場全体で受け入れていくという姿勢・方針を企業のトップ自ら示すこと」が大切だと強調する。

外国人に頼る前に…

人手不足で止む無く外国人人材を採用する企業でも、それを企業の発展に前向きに捉えることはできるはずだ。例えば、事業の発展を海外市場に求め想定する相手国出身者を雇うことで相手国の事情を調べる足掛かりにする、技術分野で企業に不足している能力・人材を確保する、日本人従業員にグローバルな視点を浸透させる、インバウンド需要に対応して外国人人材の持つ語学力や文化の理解を活用する、など様々なことが考えられる。それをトップ自らが明らかにし、企業全体に周知徹底させなければならない。

もともと日本の企業には、口には出さないけどお互いに分かっていることを従業員に期待する文化がある。言葉では言わないけど、互いに相手のことを考えて仕事を進めることのできる人材が評価されるのだ。そうしたことに不慣れな外国人人材に配慮するためにも、余程の気配りが求められることを覚悟しなければならない。うまく行けば、それこそプロ野球における外国人の助っ人や国技を盛り上げる外国人力士のような存在になるはずだ。もっとも、外国人力士がいないと成り立たない国技のようになってはいけない。まず今いる従業員がしっかりしないと、外国人にもそっぽを向かれることになるだろう。