働き方改革の2つのポイント

政府が進める働き方改革は大きく2つのポイントから構成される。1つは「労働時間法制の見直し」。働き過ぎを防ぐことで労働者の健康を守り、多様なワークライフバランスを実現することを目的としている。

もう一つは「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」。同一企業内における正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても納得できるようにすることを目的とする。

労働時間法制の見直し

まず最初の労働時間法制の見直しの中で、中小企業には2023年4月施行のものもあるが、どのようなところが変わったのか、正社員だけでなくアルバイト・パートを採用することを考えているのなら、是非頭に入れておかねばならないところだ。

労働時間法制の見直しは8つの項目から成る。
1.残業時間の上限規制
施行前は法律上残業時間の上限はなく行政指導だけだったのが、改正後は法律で残業時間の上限を定め、これを超える残業はできなくなった。
・残業時間の上限は原則月45時間/年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない。
・臨時的な特別の事情があって労使が同意する場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできない。また、月45時間を超えることができるのは年間6か月まで。

2.「勤務間インターバル」制度の導入促進
1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確
保する仕組み。この仕組みを企業の努力義務とすることで、働く人の十分な生活時間や睡眠
時間を確保する。

3.年5日間の年次有給休暇の取得(企業に義務付け)
改正により使用者が労働者の希望を聞き、希望を踏まえて時季を指定すること、年5日は取得させることが義務付けられた。

4.月60時間超の残業の割増賃金率の引き上げ(中小企業は2023年4月1日施行)
改正前は月60時間超の残業割増賃金率が大企業は50%、中小企業は25%だったが、改正により大企業、中小企業ともに50%となり、中小企業の割増賃金率が引き上げられる。

フレックスタイムの清算期間が3か月に

5.労働時間の客観的な把握(企業に義務付け)
改正により、健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況が客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう、法律で義務付けられた。労働時間の状況を客観的に把握することで、長時間働いた労働者に対する医師による面接指導を確実に実施する。

6.「フレックスタイム」の拡充
改正前は清算期間が1か月だったが、改正により3か月以内になり、例えば6月に働いた時間分を、8月の休んだ分に振り替えることができる。これにより、事業者は3か月の平均で法定労働時間以内であれば、割増賃金の支払いが必要なくなり、労働者も改正前は8月に所定労働時間働いていない場合、欠勤扱いとなってしまっていたが、6月に多く働いた時間があるため、その時間分は働かなくても欠勤扱いにならなくなった。

7.「高度プロフェッショナル制度」を創設
「高度プロフェッショナル制度」とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度。

対象者は職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1075万円以上)を有する労働者とされ、対象業務は金融工学等の知識を用いて行う、金融商品の開発業務、資産運用業務、新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務等とされている。

8.産業医・産業保健機能の強化
改正により、産業医の活動環境の整備として、事業者から産業医への情報提供を拡充・強化する。また、産業医の活動を衛生委員会との関係を強化する。労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールの推進として、産業医等による労働者の健康相談を強化し、事業者による労働者の健康情報の適正な取り扱いを推進する。

正社員と非正規社員との不合理な待遇差をなくす

次に雇用形態に関わらない公正な待遇の確保では、以下の3つがポイントになる。

1.不合理な待遇差の禁止
同一企業内において、正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されている。このため「均衡待遇規定」「均等待遇規定」を法律に整備した。
・均衡待遇規定は職務内容などの相違を考慮して待遇差を定めて、不合理な待遇差の禁止を定めたもの。
・均等待遇規定は職務内容などが同じであれば、差別的取り扱いの禁止を定めたもの。
(1)パートタイム労働者・有期雇用労働者
①均衡待遇規定の明確化
個々の待遇(基本給、賞与、役職手当、食事手当、福利厚生など)ごとに当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化した。
②均等待遇規定
新たに有期雇用労働者も対象にする。
(2)派遣労働者
改正により、以下のいずれかを確保することを義務化した。
・派遣先労働者との均等・均衡待遇
・一定の要件を満たす労使協定による待遇
合わせて、派遣先になろうとする事業主に対し、派遣先労働者の待遇に関する派遣元への情報提供義務を設けた。

2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
改正により、非正規社員は正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説明を求めることができるようになった。有期雇用労働者の雇入れ時や非正規社員から説明の求めがあった場合に、雇用管理上の措置の内容や正社員との待遇差の内容・理由などを説明する義務を創設したほか、説明を求めた労働者に対する不利益取り扱い禁止規定を設けた。

3.行政による事業主への助言。指導等や裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の規定が整備された。
以上。