提案書がテンプレートのままだと…

これまでに営業の成果を上げるには、まず質問力と自分たちの価値の訴求力を高めることが大切なことを言ってきたが、せっかくそれらが分かっていて、かつ十分な時間をかけているのに、いざ顧客への提案をするときに、自分たちが普段使っているテンプレートをそのまま使っていることがある。これでは何のための顧客への質問だったのか、ということになりかねない。また、たとえテンプレートそのままではなくても、会社名を変えればほとんど他でも使えるなと思えるような提案書などは多い。これらは顧客の立場からすればしらけるばかりだ。

テンプレートそのままの提案書だと、当然それまでの打ち合わせ中に顧客から伝えられたはずの要望に対する回答も満足に記載されていない。明らかに「どの会社にも出していそうな内容」に、顧客が心を動かされるはずもない。以前にも言ったことだが、そもそも顧客の中には、「考えがまとまっていない」「そもそもあんまり考えていなかった」「自分だけでは意見を決められない」といった状況も多いはず。そんな状態のままで提案書を受け取っても、それから先に話は前に進まなくなってしまう。顧客は「何か違うな」とか「何かピンとこない」といった思いを抱くだけだからだ。

顧客の納得感を作る

「テンプレートを使うな」と言っているわけではない。ただ、顧客のいる状況を見極めて、それに合う論理を踏まえて、商談に入っていかなければならない。
その論理とは大体以下の通りだ。

①顧客の悩みや問題をまとめてみる。
ここで顧客の情報がうまく得られないと後が続かないので要注意だ。顧客の悩みを深く掘り下げ、根本的な解決に導こうとする価値をこれから提案するのだということをうかがわせることができれば良い。
②それら顧客の悩みや問題をキーワードにして、整理する。
予算やニーズ、タイミング、体制などについての確認に漏れがあると、うまくまとめられないので要注意。①での悩みがそのまま整理もされず、拡散したままになってしまう。
③要件の確認
要件の整理について、顧客の納得感を確認するすり合わせができていなければならない。要件の抜け漏れや、優先順位を考えさせられるような質問ができることで、顧客に気付きを与えることができる。ここで顧客の納得感が得られないと、この先の提案に話を持ち込めない。
④自社の対応に関する提案
顧客の理解を確認しながら、自社の対応を説明する。ここで顧客の理解を確認せず、一方的に自社の対応を説明してしまっていることが多い。その結果、どこにでもあるような提案に陥ってしまうのだ。

キーワード化して整理

これらの流れを少し補足すると、まず顧客の抱える悩みや問題を「キーワードにして整理する」ことの大切さなのだが、これは簡単にいうと、「今回悩まれているのは、一つはこれで、こういうこともお考えなのですね」というように、悩みや問題を簡単な言葉に置き換えて、指をおりつつ整理することだ。指をおりつつ話をしていくと、顧客には「何となくこの担当者と話をしていると、要件が整理されるな」と感じてもらいやすくなる。そして後で、それを書いたものを見せて、抜け漏れがないか、問題をすべて網羅できているかを確認しておくことが大切だ。

そして、次にそれをキーワード化して整理するというのは、例えば、もし「営業の窓口を強化したい」というキーワードが出されたとすると、それが具体的にはどういうことなのかを質問して、在宅勤務が“新常態”となって、「顧客の電話対応に人手が足りない」「社内で慣れない者が電話応対に出るようになって、逆に顧客に迷惑をかけることが多い」「顧客からの情報をうまく社内で共有できない」…という回答を得ることができれば、それが具体的な内容になり、顧客の要件の一つが整理されることになる。こうしてキーワードとその具体的な問題を次々にあぶりだしていく。

行動あっての「良い提案」

そして、あぶりだした要件の一つひとつに対して、「弊社ではこのような対応策が用意できます」という形で提案ができれば望ましい。そして、この流れをスムーズに顧客に伝えるためには、どの要件の優先順位が高いのかを考える必要が出てくる。それが、「優先順位の確認」になる。提案書は、上からこの優先順位の高い順番に並べると、顧客の納得感も上がり、受け入れられやすくなるのは言うまでもない。ここまでするのは、繰り返しになるが、顧客に「この担当者はうちのことを分かってくれている」と感じてもらえるかどうかについての大切な段取りになるからだ。

こうしてうまく提案に漕ぎつけることができればそれだけでいいのかと思われるかもしれない。しかし、「良い提案」というのは「良い行動」があってものだということを忘れてはいけない。成果を上げている営業マンに聞くと、顧客とのやり取りは商談に加えて、電話やメールで頻繁にコミュニケーションをとっているものだ。特に商談の直前と直後には必ずといっていいほどコミュニケーションがある。そして、顧客に提案する資料にしても、必ず何回かに分けて作成し、コミュニケーションをはさみながら完成度を上げている。成果ばかり追っているとなかなか目に入らないかもしれないが、陰でそれなりの苦労をしているものだ。