敬語というものは非常に難しいものだと思います。
尊敬語、謙譲語、丁寧語とありますが、今は用途別に謙譲語はⅠとⅡで分けられているような状態です。
一口に“敬語”といっても分類だけでも3種類、4種類あるところを、その場その時で適切に使い分けるということはなかなか難しいものだと思います。私自身もビジネスの場でクライアント様に代わって対応する立場の者として、適切に使用できているかどうかを振り返りますが、なかなか難しい…というのが正直なところです。

そういった敬語の種類が様々ある中で、今回の記事では使い分けの仕方がしにくいと言われている、「存じ上げる」を取り上げてみたいと思います。
「存じております」より「存じ上げております」の方がなんとなく相手を持ち上げていていいようにも思えますが、実際には対象となるものにおいて使い方が変わっています。
ヒントは「上げる」にあります。「上げる」ということは、持ち上げるべき相手がいるということ。従って、知っている対象が人であるときは「存じ上げている」となります。知っている対象が物なら「存じ上げている」ではなく「存じている」を使います。
たとえば「うちの社長は今、休暇をとっているのですがご存じですか?」と言われたら「はい、存じ上げております」と言いますが、「うちの会社は明日休業日なのですがご存知ですか?」と会社について聞かれた場合は「はい、存じております」と言うのが正解だそうです。
元々、敬語というのは相手を敬うための趣旨で生まれたものなので、対象となる事柄によって使い方が変わってくることも必然なのかもしれません。
ただ、使う方の身としては、そんな細かい違いはわからないといったことや、細かい言葉遣いよりも相手を敬う気持ちがあればよいと思ってしまうかもしれません。もちろん、個人的にはそういった意見も十分賛同しうるものではありますが、ビジネスの場においては普段以上に綺麗で適切な言葉遣いをすることで、相手の方への敬意を示す大事な手段の1つなのだと思います。相手を敬う気持ちが一番だとしても、お話するお相手の方がきちんとした言葉遣いを心掛けている方だったとしたら、こちらが敬語を使いこなすことでプラスにはなってもマイナスになることはないでしょう。
堅苦しい話し方は苦手と仰る方もいらっしゃいますが、そういった場合は正しい話し方にこだわらず、相手の方に合わせて話し方を使い分けていらっしゃる方が一番言葉をうまく使っていらっしゃるのかもしれませんね。
私も電話応対時に適切に使い分けが出来るよう、心がけたいと思います。