前のめりで考えないこと

企業の副業解禁の流れや「人生100年時代」を見据えて定年後の“第二の人生”に備えるためにも、何らかの形で自分で事業を手掛けたいと思う人も多いと聞く。もちろん「定年後は何もしない」ことも選択肢としてある中で、自分で事業を手掛けること自体、とても積極的な姿勢だと思うのだが、そうした流れの中でフランチャイジー、つまりフランチャイズ本部と契約を交わした加盟店として成功を目指す方も多いようだ。その目的は様々だろうが、自身のやりたいことを追求することにそれが役立つのなら良いのだが、仮に「手っ取り早く儲けたい」「一発逆転狙い」のような形で乗り出すのなら、十分に注意した方が良い。

世の中、いろいろなフランチャイズがあるのはスマホで調べてもすぐ分かる。もちろん、それぞれにメリットがあり、だからこそ売上や加盟店が増えていたりするものが多い。しかし、当たり前の話だが一見良いことばかりが強調されていても、必ずデメリットもあるのが世の中というもの。そのメリットとデメリットを天秤にかけて、いかに自分ならメリットを利用できるのか、デメリットをカバーしていけるのかを冷静に考えなければならない。その時の気持ちが前のめりになっていると、それができていないのが本人に分かっていないことが本当に多い。それを事前に防ぐには、まず家族や知人など自分の周囲に相談をすることだ。

契約前のチェックは怠らずに

以下、ここでは特にフランチャイザー、つまりフランチャイズの本部との契約時における注意点を挙げる。

フランチャイザーとの契約の内容は普通、テリトリー権の有無、契約後の競業禁止や守秘義務の有無、フランチャイザーがフランチャイジーから徴収するお金の算出方法や徴収方法、契約違反のペナルティ、商品やサービスの販売条件に関する事項、経営指導の内容、使用される商標や商号、契約期間、契約の更新条件、契約の解除に関する事項など多岐に渡る。中には初めて聞く言葉も出て来るだろう。それら多岐に渡る内容をいきなりフランチャイザーとの話し合いの中で提示されても、まともに考えられるとは思えない。

だから契約内容をいったん持ち帰るか、予めそうした点について質問しておいて、自分に合うのか合わないのかを考えておく必要がある。いくら仕事の中身が魅力的に見えても、これらの条件が合わなければ、その先納得のいく事業展開はできないと心得ておくべきだ。くどいようだが、条件に不安がない状態、納得した上でないと、事業に立ち向かうことはできない。不安なまま起業するとそれだけで経営者として大きなハンディを背負うことになる。不安を抱えたままだと事業に全精力を注げないとは当然だ。

評判も確かめる

項目に沿って具体的にお話をする。

① 事業の種類について
フランチャイザー事業者の規模や事業の内容などをよく把握する。売上高の推移だけ
でなく、できれば利益の推移も必要。特に直近の3事業年度については、貸借対照表、損益計算書の財務内容を見て、事業の成長性、収益性、安全性を把握しておく。

② 加盟店(フランチャイジー)について
直近3事業年度における加盟店の推移。店舗数の増減はフランチャイザーの経営の判断材料にも結び付く。成長過程にあるチェーンは必ず店舗数が伸びているものだ。逆に、店舗数が減少したり停滞しているのは、必ずどこかに問題があるはずと思ってかかると良い。総店舗数に加えて、退店数の把握も大切だ。できれば加盟店の評判なども調べておくとよい(本部が予め用意した加盟店でなく、直接話を聞きに行くのがベスト。自信のあるチェーンなら、本部に頼めば例えば最寄りの店舗などを紹介してもらえるはずだ)。また、直近5事業年度において、フランチャイズ契約に関する訴訟の内容と件数を調べる。本部が大手の会社だから安心というのでなく、大きかろうが小さかろうが、訴訟件数が多いのは互いの信頼関係が構築できていないことの現れでしかない。

③ テリトリー権の有無/契約終了後の競業禁止や守秘義務契約の有無
テリトリー権は認められているのか。万一認められていないのなら、近隣の出店計画がどうなっているのかの確認は必須だ。また、契約終了後も競業禁止や秘密保持義務などの面からどのような制限がかかってくるのかを理解しておくことも欠かせない。

④ 金の問題について
ロイヤリティーについてはしっかりその計算方法や根拠について理解しておくことが大切だ。また、金銭の貸与や貸与の斡旋に関わる利率や算定方法など、その勘定処理の仕組みが複雑なことが多いが、納得するまで説明を受けることが大切だ。特にコンビニなどの店舗の場合、フランチャイジーとフランチャイザーとの間に発生する金銭の債権債務についてそれを相殺する勘定を設定しておき、その会計処理をフランチャイザーが行うオープンアカウントなどが設定されることがあるが、その細部に至るまで確認しておかないと、後々問題になることも多い。

⑤ 経営指導について/解約に関する事項
十分な経営指導が受けられるのかどうか、受講料などにフランチャイジーの負担が生じるのかを確認する。また契約を解約する場合には、その解約違約金の支払いの有無、違約金が発生するのならどのような場合なのかを十分に確認しておかねばならない。

これら契約内容を十分に理解したうえで、事業計画書を作成していかねばならない。その双方が整ったうえで、改めてそれでもフランチャイズ契約を結ぶのかどうかを決めても遅くはない。そうして覚悟を決めても、実際に事業を立ち上げるに当たっては、例えば従業員を1人採用するだけにしても数々の壁を乗り越えなければならない。そうしてようやくスタートできるのだ。十分な準備と覚悟で臨めば、その後の苦労にも余裕を持って迎えることができるだろう。