打たれ弱い人が多い

テレビで就職を控えた大学生が「叱られ方」についての講習を受けているニュースを見た。そのニュースによると、「最近は打たれ弱い人が増えている」そうで、それが就職してからの離職率の高さにつながっているのではないかと言っていた。私にも経験がある。仕事のミスに対して注意を受けたことで深く落ち込んでしまったり、一度の失敗でやる気をなくしてしまったりしたことが何と多いことか。しかし、そうした「打たれ弱さ」は社会人としての成長を阻む原因になることもあるので注意しなければならない。

まず何より、打たれ弱い人の特徴として挙げられるのは、「叱られること=自分が攻撃されていること」と考えることと、落語家の桂福丸さんは言う。福丸さんは「怒られ力 新社会人は打たれてナンボ!」の本を出しておられる。相手が何に対して叱っているのか、何故自分を叱るのかについて、相手の気持ちや価値観を理解して考えることができないと、単に自分が攻撃されたとしか考えられなくなると指摘する。ニュースに出ていた大学の例でも、相手が叱っていることの内容をしっかり見極めるようにとの指摘をしていたことに、大学生は真剣にうなずいていた。

叱られた内容にしっかり向き合う

叱られていることの表面的な「状況」にしか目を向けられてないでいると、叱られることが攻撃されていることにつながってくる。そして叱られる度に落ち込んだり、ふさぎ込んだりして、「打たれ弱さ」つながる。誰だって、叱られることに好きな人間はいない。それでも「叱られ上手になる手段はある」と福丸さんは語る。福丸さん自身、「叱られた経験から目を背けるのではなく、しっかりと向き合い、その原因を改善して仕事ができるようになることが一番の近道だと気づき、それを実践した」と振り返る。

例えば、仕事上の飲み会の場では、グラスが空になる前に注ぎに行くのはもちろん、向こうのテーブルの人がお腹が空いているのかいないのか、早く帰りたがっているのかなどを感じ取り、その人が恥ずかしい思いをせずに意向を叶えられるように、立ち回らなければならなかったという。しかし、始めはそんなことも分からず、師匠から「空気を読め」とよく叱られたそうだ。

私の場合ももちろん入社早々よく叱られた。同じ文章を何度訂正しても突き返されたりした。もう随分昔のことなので、今はそんなことも少ないだろうが、突き返される理由も言われないのである。ただダメ出しだけ。だから一人悩んで、夜遅くまで誰もいない職場で仕事をやり直していたものだ。今でこそ懐かしく思い出されるが、当時は理不尽な思いで一杯だった。それでも今の人たちのように辞めなかったのは、単に他に行く当てがなかったからでもある。

叱る基準を明確にする

だから、今の時代に「叱られ下手」が多くなっているのは確かでも、叱られる方ばかりが悪いとは限らないと思っている。叱る方だって叱り方がなっていないのではないかと思ったりする。そもそも「叱る」と「怒る」を混同している例も多い。「怒る」のはこみ上げる感情を発散するだけのもの。自分が思い通りにならない時に噴出する感情であり、結果を指す。それに対して「叱る」のは相手のことを考えた時に出る行動を指す、つまり手段に相当する。「叱られ下手」が多いのと同じくらいに、叱ることに苦手意識を持つ管理職が多いのも最近の特徴だろう。ハラスメントが殊更に取り上げられる時代だ。

「怒る」というのはこみ上げてくる感情を発散することなので、そこに上手い、下手はない。一方、「叱る」ことは相手のことを考え、成長してもらいたいから行うもので、その目的も罰を与えることではなく、正しい考え方や方法手段を教えることにある。その時の注意点を私なりに考えてみた。

まず一つ目は、叱る時の基準を明確にしておくことだ。例えば、1分でも遅刻をすれば叱るのか、それとも10分なのか、1度目は何も指摘をせず、2度目から叱るのかといった具合だ。その時々の思いに任せていると、相手から「公平じゃない」と思われるだけで信頼されないで終わる。

指摘は短く、最後は笑顔で

二つ目は、どんな状況であっても頭ごなしの叱り方はしないことだ。相手の言い分をよく聞くと、遅刻したのにもそれなりの事情があるのかもしれない。例えば、親を介護しているといったような家庭の事情があったりとかだ。そうした事情が分かった上での指摘かどうかで、叱り方や今後の対策についても変わってくるだろう。

最後に、相手を追い詰めるような叱り方はしないということだ。もちろん、叱る上ではその原因となった行動などを正確に提示して、どんな基準に対して違反しているのかを指摘する必要があるのだが、思い余って人格まで否定してしまっていることがある。「だからお前はダメなんだ」「だから周囲から相手にされないんだ」など。

ねちねちといつまでも一つのことを言い続ける上司は最悪だ。「指摘は短く」「最後は笑顔で」というのが、叱る時のまとめ方だ。叱るのが上手な人は、その叱った後、叱られた後の後味の良さにある。叱る方は自分の心と頭をきっちりと整理をして「正しく」叱ることで、叱られる方も素直に反省し易くなる。

これまでの経験から言うと、正しい叱り方を持つ上司がいるチームや会社ほど、一体感が生まれる。メンバーの成長のスピードも速い。逆に叱らないことは「関心を持たれていない」という意識にもつながりやすい。叱り方一つとってもとても難しいものだ。