情報を活用する

これからの時代、寡黙な経営者はそれだけでハンディを背負っていると認識した方が良い。黙っていても仕事が向こうからやってきたり、従業員を増やしていかに仕事をさばくかに悩んでいたこれまでなら、何も語らなくても良かったかもしれない。しかし、これからはそうはいかない。そもそも、経営の大切な要素として、人、モノ、金と情報が挙げられる。人、モノ、金は具体的で経営者にもすぐに理解できるところだろうが、情報はつかみどころがなく、何となく大切というのは分かっても、いざその取り組みとなれば、何から手を付けてよいのか分からない経営者は多い。

しかしそんな時、私はまず経営者は自らの夢を従業員に語り掛けるところから始めようと提案している。従業員に夢を語れないようでは、今の若い世代は企業に魅力を感じない。経営者の中には自らカリスマ性のないことを指導力の欠如の言い訳にしている方々もおられるが、今の世の中、カリスマ性のあるトップより、夢を一緒に語れるトップの方が多くの共感を得ることができるのではないだろうか。そして、その夢に共感してくれて、一緒に実現したいと思える時に多くの人材が集まってくるのだ。

常識の範囲では分からない

夢以外にも語らなければならないことはたくさんある。

例えば、企業の就業規則。そこに働く上での労働条件が定められてはいても、ルールまでは書かれていないことが多い。マニュアル本を備えている企業もあるが、していいこと、いけないことまでは記載されていない。どんなことを考え、行動すれば、社長から評価され役職や給与に寄与するか、従業員なら知りたいはずだ。反対に、何をすればいけないのか、罰則に値するのかもまったく分からない。そんなことは大体社会人として常識の範囲があるだろうと一蹴されるのだ。

しかし、その逆にルールブックを作って効果を上げている企業もある。当然、そのルールで評価を得れば金銭的にも待遇も良くなる仕組みになっている。今の時代、上からやれと言ってもダメで、納得できる基準がないと特に若い人たちは動かないものと考えるべきなのだ。

サッカーのワールドカップでも、当初日本代表の監督だったハリルホジッチ監督は選手たちに厳しい人だったようだ。その後を継いだ西野監督は、逆に選手の意見を聞きながら納得させて自主性を尊重した。それがあの一致団結力につながったのだと推察できる。

プレスリリース、SNSで社外にも

社外に向けて語り掛けるのも大切だ。今の世の中、その気になればSNSなどを使っていくらでも語り掛けることはできる。便利な世の中になった。ひと昔前ならプレスリリースを使ってマスコミに訴えるしか社外への効果的な広報はなかった。もちろん、今もプレスリリースは有効だ。それを使えば、販促費0円で自社の宣伝ができる。もちろん、それでうまくマスコミから取材されて記事掲載されればの話だが。それで実際に企業のブランド価値の向上につながり、東京の下町にある町工場が、毎年数名の大卒が就職活動に来るようになった例もある。

しかし、今ではプレスリリースがどうしても苦手という人にもSNSがある。ブログでファンづくりをして、そこから異業種交流会を立ち上げ、そこでの情報を自社の事業展開に活かしている例がある。プレスリリースであれSNSであれ、それらを使って企業の情報を発信し続けることが大切だ。よく「1度試みたけどうまく行かなかったので止めた」という話を聞くが、何でも1度で成功するなら誰も苦労はしない。情報発信は博打ではない。定期的な行動がいつか成果につながるのだ。

反響もしっかり受け止める

忘れられがちなのが、情報発信と同時にその発信した情報に対する反応、反響をしっかり受け取ることだ。社内に情報を発信したのなら。従業員たちがどのようにそれを受け止め、どういった行動につながっているのか。社外なら企業を取り巻くステークホルダーたちが、それぞれどのように情報を受け止めたのかを注意深く観察し、必要があれば修正する勇気を持たなければならない。それこそが社会に信用を築くことにつながり、企業のブランド構築に結び付いていくのだ。

企業の情報に関する取り組みは、ここに取り上げただけではない。本来もっと多岐に渡る視点が求められる。大手企業でもそれに十分に取り組めているところは少ない。しかし、中小企業は小回りが利くからこそ情報の取り扱い次第で企業を大いに変えていけると考えている。何もすべての点で完全な情報への取り組みをしなければいけないということはない。できるところから始めれば良いのだ。それが経営者が夢を語ることにほかならない。幸い、情報への取り組みには工夫次第でコストのかからないものも多い。これを試さない手はないと思うのだがどうだろう。