人それぞれの仕事への関わり

久し振りに会った私の古くからの知り合いが元気がないのでどうしたのかと尋ねたら、奥さんが入院をしていて、その看病と家事とでほとんど仕事ができていないという。彼は50代の個人事業家なのだが、ここ2か月ほどは看病が最優先で、仕事の依頼があっても断っているという。

それで思い出したのが、ある大手企業で働いている若手担当者の話で、彼は古くからの友人とは対照的に、仕事に追いまくられている日々が続き、まったく私生活を楽しむ時間がないとボヤいていた。人生のそれぞれのタイミングで、時間の使い方は大きく変わるものだと改めて思った。

ワークライフバランスで相乗効果

「ワークライフバランス」という言葉をよく耳にする。特に、日本人の働き方が見直される中で話されることが多いようだが、どうも私自身も曖昧に考えていたのだが、これは決して仕事と私生活を半々に分けることではないということにお気づきだっただろうか。特に日本語で「仕事と私生活の両立」と言えば、なおさら半々に分けると思いがちだ。

本来の意味は、「仕事と私生活の調和・調整」であって、私生活の充実によって仕事がうまくはかどるとか、仕事がうまくいくことで私生活が潤うというように、仕事と私生活の「相乗効果」を指すものだ。だから、仕事と私生活のどちらか一方を取捨選択したり、犠牲にしたりするものではなさそうだ。

仕事が遊びの一種にも

アメリカの若手の間では、「work-life integration(ワークライフインテグレーション)」(仕事と私生活の融合)という考え方があるようだ。特に専門職の場合、仕事と私生活の境界があいまいになっていく一方で、創造的な分野で働く人の中には、仕事がほとんど遊びの一種になっているという。

日本でもスマホと在宅勤務の時代になって、ますます仕事と私生活の境界があいまいになろうとしている。その流れを見ると、「バランス」から「融合」する時代に向け仕事の内容や会社内の規則などを見直していかねばならない。そうでないと、これからの少子高齢化社会の中で企業が生き残っていくことはできないだろう。

選択可能な仕組み作りを

仕事と私生活の比重の置き方は、先に見たように、その人が人生のどのステージにいるのか、独身か既婚か、新入社員かベテランかなどによっても変わってくる。だから、その時々でどれを選択するのかは個人の問題であるとする「work-life choices(ワークライフチョイス)」という考え方もあるようだ。

個人事業家ならその時々の状況に応じた働き方をすれば良いが、従業員を一人でも雇っているのなら、彼らにも選択ができる会社の制度・仕組み作りが欠かせない。それが社員を大切にする会社ということになり、長い目で見て優良企業のイメージの醸成にも役立つのではないだろうか。