「私」でなく「我々」

スティーブ・ジョブズ氏は、「偉大なことは一人ではできない」という言葉を残した。その例にならって、私は最近、人に自分の仕事の話しをする際に、「私の想いは」、「私の顧客は」…と言っていたのを、「我々の役割は」、「我々の狙いは」…というように、主語を変えて話すようにしている。

そうすると不思議なもので、使う言葉が「私」から「我々」に変わっただけなのに、何だか社会に対する責任が大きくなり、仕事への向き合い方もより真摯になったような感じがする。だが、当たり前の話しだが、問題はそれで何を話すのかが問題となる。

使命や顧客を問う

あの「マネジメントの父」とも称されているピーター・ドラッカー氏は、そのことに対して5つの質問を示している。

まず一つ目は、「我々の使命は何か」ということだ。企業数が400万社もある日本の中で、それでもわが社がしなければならない理由がどこにあるのか、この根本的なことを問いただしている。人は目的があれば、困難を乗り越えられる。仕事も同じだ。

二つ目は、「我々の顧客は誰か」だ。誰の役に立ちたいのか、どういう人を幸せにしたいのかが明確でないと、使命も薄れてしまう。本来の顧客とは対象が異なることから、黒字の事業であっても売却の対象になる例があるのは、その重要性を端的に示している。

顧客の価値は?我々の成果は?

三つ目は、「顧客の価値は何か」。自分たちが売りたいものを押し付けて売るのではなく、自分たちが役に立ちたいと思っているお客様は何を望んでいるのか。何に価値を感じているのか。コピー機を売ることでなくコピーを売ることに気付き、コピー機をタダで置かせてもらって使った分だけのコピー代だけを請求することで、富士ゼロックスは一気に飛躍した。

四つ目は、「我々の成果は何か」。得てして売り上げや利益のことだと思いがちだが、大事なのはお客様がどうよくなったかだ。医者であれば、患者の病気が治ったかどうかだということだ。

私は一人じゃない

そして最後の五つ目は、「我々の計画は何か」ということだ。計画とはただ数字を立て、スケジュールを組めばいいわけではない。喜んでくださるお客様をどれくらい増やすのか、そのために人、モノ、金、時間、情報などの経営資源をどうやって手に入れ、活用するのかという目標を立てた上で、役割分担して実行していく。うまくいかなくても、軌道修正を重ねることで、生きた経営が行えるのだ。

「我々」を意識することで、そうした質問に立ち向かうのが自分一人ではなく、実際に会社のメンバーや会社を取り巻く周囲の人たちが味方にいることを感じさせる。そうすれば、何だかもっと頑張れるような気もしてくるのだ。