愛社精神はどのくらい?

企業人事では従来の「従業員満足度(employee satisfaction)」に代わって「従業員エンゲージメント(employee engagement)」の向上を重視する動きに移ってきているとされる。この最近注目されている「エンゲージメント」という言葉、経営者や人事担当の方なら一度は耳にしたことがあるだろう。しかし、詳しい意味はとなると、よく分からないという方も少なくないはずだ。「エンゲージメント」とは、一般には「約束」「雇用(契約)」「婚約」などを意味する言葉だが、人事では「愛社精神」「愛着心」「思い入れの深さ」「仕事に対する熱意」といった意味で使われる。

これまで人事で使われてきた従業員満足度は、読んで字の如く、従業員が仕事の内容や報酬、待遇、職場環境、職場の人間関係などに対して、どのくらい満足しているかを示す。この従業員満足度と従業員エンゲージメントの2つの概念は重なるところがあってややこしい。その違いは、端的に言うと、仕事に対して積極的に関わっている従業員は恐らく満足度が高いと推測できるが、満足度の高い従業員がすべて仕事に積極的に関わっているわけではないということだ。給料もそこそこもらえているので満足はしているが、仕事はできるだけ楽に済ませたいという従業員だっているだろう。

企業との対等な関係を反映

ついでにエンゲージメントはロイヤルティとも異なる。ロイヤルティは、企業に対する「忠誠」や「忠実」を意味する。つまり、年功序列や終身雇用などの制度によって、従業員が企業に従っているという関係性を表す。ロイヤルティが高い状態にある従業員は、組織の方針に従うという考え方が根底にあり、必ずしも従業員個人の想いと企業の想いが合致しないこともある。一方で、エンゲージメントは企業と従業員の立場が対等の関係にある。エンゲージメントが高い従業員は、個人の想いと企業の想いが一致している。このほか、モチベーションとの違いも留意しておきたいところだが、それはまた別の機会に譲るとする。

このエンゲージメントが最近注目され出しているのには訳がある。かつて日本では、終身雇用や年功序列のように、企業が個人を従えるという関係が一般的だった。しかし今は従業員個人がよりキャリアを自律的に設計できるようになり、企業と対等な関係を構築するようになっている。つまりこれまで当たり前とされてきた方法では、企業と個人の結びつきを維持することが難しくなっているのだ。実際、若手に「あなたは今から3年後、5年後にどこにいるか」と聞いてみるといい。同じ会社に長く居続けようとする人が、かつてほどいないことに驚かされるのに違いない。

あなたは何年居続ける?

米国では同様の調査で、かつて「5年後にあなたはどこにいますか」と尋ねていたそうだが、今では「あなたは今から1年後、あるいは2年後にどこにいますか」と聞くのが標準になっているという面白い話もある。求人市場が流動的になっていて、若い従業員ほど企業に対してかつてほど忠誠心を感じない傾向があるのだそうだ。日本でもGDPの成長率はG8中最下位、少子高齢化や実質賃金の低下なども影響し、従業員たちが目標や希望を持ちにくい状況だ。さらに仕事に対する価値観は多様化し、モチベーションが下がりやすい環境になっている。

このように下がりやすい従業員のモチベーションを維持する手段の一つとして、多様化する従業員一人一人に適したマネジメントを実現するために、エンゲージメントが注目されているのだ。もし仮にかなりの数の従業員が「何年後かにこの会社にいることが想像できない」と回答する状態なら、それは経営陣に対して何等かの警鐘を鳴らしていることになる。質問として、「仮にあなたが明日辞めるとすれば、理由は何か」と聞くのも面白い。例えば、「意思の疎通が図れない」「過小評価されていると感じる」など、興味深い回答が返ってくることになるだろう。

ビジネス以外にも応用が広がる

実際にエンゲージメントの高い職場とはどのような職場だろうか。いくつか挙げてみると、「自分たちの目標やあるべき姿をトップから現場のマネージャーやメンバーまで共感できている」「自社の価値観をすべての社員が理解し、大切にしている」「マネージャーとメンバー、メンバー間同士で対話がきちんとなされている」「対面、ワークスペースなどで口頭・文面を問わず、社内のコミュニケーションが大切にされている」「企業も従業員も一人一人の成長を大切にしている」「実施した施策に対する振り返りを精緻に行っている」などなど。こうした項目が特徴的なところだろう。

私が個人的にこんな職場であってほしいなと思うのは、働くことに対して「楽しい」と感じることができることだ。「楽しい」という言葉は、人によっては不真面目と受け取られる恐れもあるが、そうではなく、「楽しめる」といった意味にとってもらえればいい。自分が毎日行っている仕事から少なくとも何等かの楽しみを感じることができないなら、この上ない満足感や生産性も得ることはできないのではないか。米国では最近ではエンゲージメントという言葉がビジネス以外でも使われ出しているそうだ。例えば「student engagement」とは学生が主体的・積極的に授業に参加することを指すのだという。いろいろなところに応用は広がっている。

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