人材の少ない営業をどうカバーするか

前回、自社のWebサイトへの集客を図ることで、自社のビジネスモデルを変更した企業の例を紹介したが、もう一社ITを活用して営業戦略を変えようとしている企業の紹介をする。

この会社は本社が東京にあり、モーターの駆動基板やコントローラー、顧客仕様に合わせた駆動系装置の開発・製造を行っている。売上高の規模は20億円前後だ。現在社員は40名前後いて、そのほとんどが製品開発と製造に関わっている。なかなか人材募集をしても人が集まらず、営業に割く余裕がないことが問題とされている。そこでITを使って営業の効率を図ることを狙いにした。

これまで数少ない営業の担当者は展示会などで集めたリストを元に、顧客開拓に回ることを主にしていたが、現状のやり方はどうしても効率が悪い。それをWebサイトを充実させてそこに顧客を集め、顧客の抱える課題のレベルが、この会社との成約に至るまでの過程のどの段階にあるのか(例えば、初期の問い合わせなのか、中期の課題解決に向けた技術的な相談なのか、後期の価格や納期などの対応の相談なのか)によって、レベルに応じた専任の対応者が顧客の段階を一つずつ引き上げていくというものだ。

Webサイトに情報を集める

今はまだ、その実現に向けて取り組んでいる最中なのでこれ以上の詳細を書くことはできないが、Webサイトの充実に向けた作業はすでに業者に発注していて、年内にも新しい営業体制がスタートする予定だという。

しかし、どうしても疑問が起こるのは、「そんなに簡単にWebサイトに人が集まるのか」ということだ。この会社でも業者に任せるのはWebサイトの外側の作りや、指定した原稿の入力だけであって、内容は自社で作っていくのだ。そのための内容を誰が、どのように作っていくのかということが肝心の問題となる。

この会社ではそれを「社員全員で作るようにしたい」という。もちろん、責任者を置いた上でのことだが、いくら社員は現在40名前後で限られているとはいっても、それが全員、ITに積極的に関わっていくことなんてできるのだろうかと考えてしまう。

しかし、それでも「できる」とこの取り組みの責任者は胸を張って自信満々の様子だ。その秘密は何だろう。

健康経営の取り組みが自主性を引き出した

この会社では昨年、創立35周年という節目を迎え、同社にとって意欲的な中期経営計画を立てた。それは5年後に売上高を現在の35%増にするものだ。そのためにはこれまでの延長線では達成することができず、当然のことのように新しいことに挑戦しなければならない。その挑戦を支えるのが「一人ひとりの社員のモチベーション」にかかっていると見た。しかし、当時の社員を振り返って、「皆、能力はあるのにどこか疲れていて、その力を出し切れていない感じがした」と振り返る。そこでまず、この会社で取り組んだのは、一人ひとりが健康で仕事につけるようにと、「健康経営」への取り組みだった。

一見、Webサイトの充実と健康経営の取り合わせは何の関係もないように思えるが、決められた答えがあるわけではない「健康経営」に社員が取り組む中で自主性が生まれ、それまで異なる部署の間ではほとんど社員同士のコミュニケーションがなかったのが、活発な意見交換が起こり、「今では毎日の仕事への取り組みも前向きになっている」と思いがけない効果に驚いた。その流れの中で、「Webサイトを改訂すれば」という社員からの提案があり、同じ改訂をするなら、「皆に見てもらえるようなものを」ということで社員の意識がそろったのだった。

情報が活発に発信されるところに新たな情報が集まる

その結果、この会社には6つの部署があるのだが、それぞれ部署でWebサイトへのブログのアップや、過去の取り引きの例、同社製品を使った顧客の感想、研究開発の取り組みまで、「こんなことまで」と思うような情報の掲載が自発的に考えられているという。もちろん、成果はまだまだこれからだが、こうした情報を発信していこうという会社全体の盛り上がりが、顧客を集める際にはとても有効な武器になる。譬えは悪いが、蟻が砂糖に群がるようなもので、どこか楽しそうであったり、活発に情報が発信されているようなところに、私たちも惹かれるものだ。ITを武器にするときの要諦だと思う。

顧客が向こうから集まってくれるのであれば、これまでのように営業担当者がやみくもに顧客を回る必要はなくなる。むしろ、じっと社内にいて、Webサイトに寄せられる相談事に対して、的確に対応すれば良いのだ。中には、実際に会ってからということだってあるかもしれないが、それにしても会う目的がはっきりしているはずだから、営業効率から見ればこれまでとは天と地ほども差がある。

この会社の場合のきっかけが「健康経営」だっただけで、「健康経営」に取り組まなければならないというわけではない。ただ当初はどんな方法をとっても、ITの活用では会社の各部署からの社員の方の協力を得られるための地道な取り組み避けることはできない。そうでなければ、この会社の取り組みもこれほど活発にはならなかったはずだ。それではいくら最先端のツールを取り入れたところで営業を改革することは難しかったであろう。

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