社風で分かれる上司のタイプ

私は大学を出てから3つの会社を渡り歩き、その後で独立開業した経緯を持っている。だから、独立前にはそれぞれいろんなタイプの上司がいて、その時々仕えてきた。面白いのは、それぞれの会社の社風を現しているかのように上司のタイプが分かれることだ。最初の会社は自由奔放な社風で、上司もおおらかなタイプが多く、むしろ本当に部下の管理をしているのかどうか分からないところもあったりした。

それはそれで問題なのだが、次の会社はその全く逆で、上司も部下に対して細かな箸の上げ下げまで指示をするようなタイプが多く、私などはそのギャップに悩まされたものだった。最後の会社は、これも前の2社とは異なりベンチャー企業だったので、直接の上司は社長で、力強くオールマイティな感じだった。

それぞれにタイプは分かれるものの、今から思えば、部下から嫌われる上司にはある決まった口癖のようなものがあった。その時のやり取りを教訓にさせてもらって、今、顧客の相談に乗ることもあるので、悪いことばかりというわけではないが、これからの皆さんの対応に少しでも活かしていただければと思って、思いつくままにお話しさせていただくことにする。

部下の意見を聞く

何か相談事や頼まれていた資料などをまとめて提出する時などに、「○○くんはどう思う?」と聞いてこられる上司は多い。私などはそう聞かれると、何だかとても当てにされているようで、嬉しく思ったりしたものだ。私が意見を述べると、私の初めての上司はそれに対しても、「あの営業部長ならこう聞かれるんじゃないか」とか、「もし役員クラスならこんなことを求められるんじゃないか」などと気付かなかった見方を次々に教えていただき、宿題をもらったような感じで勉強させていただいた。それも決して問い詰めるような感じではなく、自然に聞いてこられたことも私が参考にさせてもらっているところだ。

そういえば、あの松下幸之助氏もよく人に意見を聞かれた方だったようだ。ある本によると、懸案事項に対しては必ず3人以上から意見を聞き、その中で一番良いと思った意見の人に「君しかいない」と言って仕事を任せたとか。私も松下幸之助氏ほどではないにしても、少しでも近づけるように頑張りたいと思っている。

テストする感じで意見を求めるのはダメ

この部下に意見を求めることの効用として、部下に自分の頭で考えさせるということは当然あるだろう。問題に対して正しいアプローチで正しく考えると、誰が考えても同じ結論に至るようにも思われるが、たとえ同じ結論であったにしても、上司から頭ごなしに指示されるのでなく、自分で考えた上での結論であれば納得感も得やすい。それに、上司が指示しないと動かないようではいつまで経っても、組織として大きく成長することもできない。また、考える時に必要なデータは、むしろ顧客に日頃接している部下の方が多く持ち合わせていることも考えられる。

ところが、同じ対応をとっても、部下から嫌われる上司もいる。無論、部下自身が何も考えずに報告だけをしてきた場合とか、「そんなことぐらい自分で考えてよ」と思わずにいられないことまで指示を求めてくる場合などは問題外だ。

そんな嫌われるパターンの一つが、部下をテストする感じで意見を求めるものだ。部下が言ったことに対して反論したり、「正解!」などと面白そうに言ったりする。別にクイズをし合うのが目的なわけでもなく、結論がすでにあるなら部下からすれば「先に言ってよ」という気になったりするものだ。

コーチング病にかかっていないか

また、部下の権限を越えるので上司の判断を仰いでいるのに、それを上司が判断しないというのも部下から見ればズルく感じられる。これらの嫌われるタイプに多いのは、「コーチング病」に罹っている奴だ。コーチングはご存知の通り、相手から答えを引き出すことを指している。それが有効な場合ももちろんあるのだが、それが全てに通用するわけでもない。「自分の信念がないのではないの?」と思われれば、上司としては致命的だ。

「何でできないの?」「やる気があるの?」などの質問は最悪だ。そもそも、できない原因が分からない、又は対策を実行できないから上司のところに来るのであって、それに対して部下の人間性まで否定するような発言は最も慎むべきだろう。「やる気はあるの?」と聞かれても、部下にしてみれば「あります」としか答えようもない。

そんな時は「どこで詰まっているの?」とか「仕事の優先順位に問題があるのでは?」と、具体的な問題解決法を提示できるように方向性を示してやるべきだろう。

過去と比べて、人間関係も希薄になりがちと言われる中で上司も大変だとは思うが、部下の直接仕事に関係しないところで問題があることも考えられる。例えば、社内の人間関係や家族の問題、体調など。「そんなところまで」と思わずに、是非上司としての深い度量を見せてやって欲しい。