時間で勝負せざるを得ない状況

私がまだ若手と呼ばれていたサラリーマン時代、「働き方改革」が流行りの今から見れば、とんでもないことのようにも思われるが、夜の11時や終電間際の12時近くまで働くのは当たり前だった。そして、たまに早く帰ろうとすると、「ちょっと頭を冷やしてこい。一流大学を出た人は、まだまだ遅くまで働いているんだ。お前は頭が悪いのだから、彼らより働かないでどうする」などと叱られたものだった。そして、本当に外に出たら、まだ周囲のビルは煌々と灯りが灯っていて愕然とした。自分より仕事のできる人が自分より時間を使って働いていたら、これはもう逆立ちしたって勝ち目はない。

誰もが等しく持っているものが「時間」だ。通常の勤務時間とされる8時間を含めて、その他残りの時間の使い方が他の人との差別化につながるのは、いかに残業が悪者扱いされている今日でも変わらない。もし、ビジネスマンの口癖アンケートというものがあれば、恐らく「忙しい」「時間がない」がトップを占めるのでないか。仕事のノルマだけのことではなく、そこには「夢を達成したい」といったこともあって、「暇にしているなんて言うと恥ずかしい」という気持ちすら湧いてくる。

時間の無駄遣いに注意

ただ、だからと言って、誰かに「忙しい」と愚痴をこぼしていても仕方ない。「時間がない」ことを嘆くより、時間を何とかしてつくることに工夫する方がずっと有益だ。私はとにかく時間の無駄遣いには注意をしている。車で移動する時は、気になっている人の講演のCDを聞いたり、電車での移動時は、これからの打合せなどの最終的な対策をまとめたり、睡眠が不足している場合は眠るようにしている。食事をとる時は、極力仕事仲間とのコミュニケーションに当てるか、自分一人の時はそれこそほとんど時間をかけないようにしている。ちなみに私の特技は早食いだ。

そんな風だから、私は人から時間を無駄にされるのも嫌いだ。約束の会議の時間を守らない人、セミナーにおいても時々集まりが悪いので時間を5分、10分と遅らせて開始されるようなことがあるが、あれなどは最も不快なことだ。せっかくお会いしても、無駄話に時間を費やすような相手とは、今後一緒に仕事をしたくないと思ってしまう。つい先日もあった話だが、私も関係するからということで出席を求められた会議に、いざ出席してみるとほとんど何のための出席なのか分からないことがあった。これなどは、会議の在り方にも問題がありそうだが、普段からどんな仕事の仕方をしているのかと訝しく考えざるを得ない。

思考の中断を無くする

まあ、そんな風に言うと、とてもせっかちな人だなと思われるかもしれないが(実際に「相当な」せっかちでもあるが)、そんな私が今、最も時間の管理で重視しているのが、思考に集中する時間の中断を無くするということだ。仕事の効率を下げる最大の原因は、思考の集中を妨げられることにある。仕事の集中しているときに電話がかかってきたり、訪問客があったりすると、どうしても手を止めざるを得なくなる。そうすると、再び仕事に取り組んだ時に、中断する以前のテンションまで持っていくのにとても時間がかかったりする。

「集中思考というのは100mを全力で走るのに似ている」とどこかで読んだ記憶がある。「ヨーイドン!」の合図で走り出して、段々スピードを上げて最速のタイムでゴールを駆け抜けるのが100m走なのに、もし10mごろに障害物があればどうなるか。答えは想像するだけで十分だろう。仕事の際にも、もし集中すれば1時間で終わる仕事が、いつまで経っても終わらないということになりかねないのだ。だから集中力勝負の仕事をするときは、私は極力こもることにしている。物理的にこもることが無理でも、その間は電話やメールなどを受け付けないのだ。突然の訪問客ももちろん受け付けない。

相手の時間も尊重することが大切

これは私の性格かもしれないが、集中力勝負の仕事の前に細かな仕事が溜まっていると、それも集中を妨げる要因になるので、まずそれらの細かな仕事をまとめて片付けてから集中力勝負の仕事にかける時間をつくる。そうでなければ、「あれもしなきゃ」ということが頭から消えず、集中が妨げられるからだ。それに細かな仕事はまとめてすることで、時間効率も図れることがある。例えば、電話をその都度掛けるより、一度に4件、5件と掛けた方が、それはそれで集中できる。

集中タイムとして個人的には早朝から午前10時ごろまでがお勧めだ。それ以降になると、どうしても飛び込みの連絡も入ってくるし、それを無碍に断ることもやはり極力避けたいと思うからだ。夜間に集中できる人はそれでも良いのだろうが、集中するには睡眠時間もできるだけしっかり取りたいところだ。時間をつくるには個人の状況に応じた工夫がいるだろう。外部の人に対しても、自分が時間を大切にするのと同じように相手の時間も尊重することで、その行動パターンを理解してもらうように努力をすれば、自然と協力してもらうことができるはずだ。