宣伝文句がささらない

「創業100年の伝統を継いだ○○」、「業界でトップの売り上げを誇る××」と、世の中商品のPRで溢れているが、正直「へぇー、そうなのか」とは思うことはあっても、あまりそれで買ってみようとまでは思わない。意地悪く言えば、「それがどうしたの」となるだけだからだ。

以前、家族と旅行に行った時、居酒屋風の店で食事をしていてビールから焼酎にしようとしてメニューを見たら、そこには何十種類もの焼酎が載っていた。「原料に△△米を使った□□」、「数量限定の××」、「独特の製法による本格焼酎○○」…。私は「分からないなぁ」とため息をつきながら、結局店の人が勧める1本にした。

顧客を見ているか

随分以前、テレビを何気なく見ていた時、居酒屋の親父さんがこだわりの強い「名物親父」とかで、客に食べ方まで注意をしているのを面白おかしく取り上げていた番組があった。その時は、そんな店で客も満足しているのかなと思ったりしていたが、焼酎のリストを見ていてその店のことが思い出された。

そのどちらも自己満足に陥っていて、顧客の方を見ていないということだ。焼酎であれ店であれ、それで売り上げが伸びているのなら問題ないのだろうが(少なくとも店の方は当時番組の放映時は客でいっぱいだったが、今はどうなのか知る由もない)、本来、それはおかしいだろうと素直に思う。

何にお金を支払ってもらうのか

顧客にとっては、創業何年だろうと、業界で売り上げがトップであろうがなかろうが、店でどんな風に食べようが、関係のない話だ。顧客がお金を払う。それが何に対して払うのかが大切なのだ。先ほどの店であれば、(ちょっと考えにくいが)名物親父に叱られることに客が価値を感じてお金を支払っているのなら分かる。

でも焼酎なら、例えば「焼酎の初心者に人気」とか「揚げ物に合う」、「焼き魚にぴったり」とかの説明の方が、選びやすいし価値を感じやすい。スーパーなどに行くと、「卒業式で○○」、「お花見で△△」と季節の表現を用いて、うまく顧客を取り込んでいるように見える。顧客にそれを買った時のメリットをイメージし易くしているのだ。

デフレは商品(サービス)提供者の問題

価格というのは、理屈で言えば、顧客に対してその商品なりサービスから得られるメリットを大きく見せることができれば、商品(サービス)単価も必然的に上がるはずなのだ。

昨今は依然としてデフレからの脱却に心もとない状態が続いているが、要はそれができていない、商品(サービス)の提供が自己満足に陥っているからだといえる。

事は宣伝文句だけに収まらない。商品やサービスを考える時の思考から考え直す必要があるのかもしれない。「俺はこんなに努力しているのにちっとも売り上げが上がらない」と愚痴っていても仕方がないのと同じだ。「誰に、どんな時に、何を」提供しようとしているのかをしっかり押さえ、それをもっと宣伝すべきだと思う。